米FRB 利上げ見送り決定も 年内にあと2回の利上げ想定

アメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会は金融政策を決める会合を開き、去年3月に利上げを開始して以降、初めて利上げの見送りを決めました。一方、政策金利の見通しについては年内に2回の利上げが想定される内容となりました。

FRBは13日と14日、金融政策を決める会合を開き、利上げを見送り、政策金利を据え置くことを決定しました。FRBが金利を据え置くのは記録的なインフレを抑えこむため去年3月に利上げを開始して以降、初めてです。

政策金利は現在の5%から5.25%の幅を維持します。

声明では「FRBは金利を据え置くことで今後の追加の経済データと金融政策の影響を評価することができる」としています。

今回の会合では、FRBは参加者18人による政策金利の見通しが示され、ことし・2023年末時点の金利水準の中央値は5.6%で、前回・ことし3月に 示されていた見通しの5.1%から引き上げられました。政策金利の引き上げを1回あたり0.25%とすると、年内にあと2回の利上げが想定される内容となっています。

アメリカでは先月の消費者物価指数が前の年の同じ月と比べて4.0%の上昇と、上昇率が11か月連続で前の月を下回っています。一方、インフレの要因となる人手不足は続いていて企業の間で賃金の上昇分を物価に転嫁する動きが収まらないなどインフレの根強さを示す経済指標も発表されています。

会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は「インフレ率は去年の半ば以降、いくぶん落ち着きつつあるがインフレ圧力は引き続き高く、物価目標である2%までの道のりは遠い」と述べました。

また「年内にさらなる利上げを予想しているが、今回の会合では、これまでの利上げの速度を考慮して、インフレ率を目標の2%に戻すのにさらなる政策が必要かどうか決定するために追加の経済データと金融政策の影響を評価できるよう金利据え置きを判断した」と述べました。

今回、利上げを見送った理由について、「金融不安がもたらす影響をわれわれは完全にはわかっておらず、それを見極めるのは時期尚早だ。影響を把握するにはより時間がかかる。利上げの『見送り』とは呼びたくないが、今回の政策金利据え置きは理にかなっている」と述べました。

年内にさらなる利上げを行う可能性がある理由として、「FRBはこれまでインフレが低下すると一貫して予想していたが、この予想は外れた。エネルギーと食品を除いたPCE・個人消費支出の物価指数を明確に低下させたいがこの半年間、進展が見られない。経済への打撃を最小限にしたいが、インフレ率を目標の2%に戻さなければならず、まだそれには達していない」と述べました。

インフレの要因と指摘されている人手不足の現状については、「賃金は1年前の極端に高い水準からは徐々に下がってきているが、まだ力強く上昇している。企業の求人数は依然として労働者の数を大きく上回っている。FRBは賃金の上昇率を物価目標の2%への道筋にのせたいし、それがすべての人の利益になる」と述べました。

また、「かなり多くの銀行が商業用不動産に融資していて、そのほとんどが中小の銀行によるものだ。商業用不動産向け融資に注力した銀行のなかには大きな損失を被るところもあるだろう。FRBとしてはこの問題を認識しており、状況を注意深く見ている」と述べました。